開成
開成中学校 理科 問題解説&入試分析★2021年(R3年)
今回は開成中学理科を取り扱いたいと思います。
前回の記事でも書いたように平均点は
(合格者平均 全体平均 満点)の順に
理科(54.1 49.7 70)でした。
低めの水準ではありました。
大問1~3はしっかり開成対策をしていればほぼ満点近くいけると思われますが物理分野の大問4で差がついたと思われます。
【問題分析】
○大問1…化学分野の問題。Ⅰはかなり基本的な水溶液の知識の確認。開成で求められるのはこの程度であることも多い。Ⅱは実験器具の扱い方で、開成でもよく出るので難しくはないがしっかり確認して満点をとりたい。
○大問2…地学分野の問題。Ⅰは月の問題であるが満月の高度は太陽と逆になることは過去問でも問われているのでしっかり過去問やっておきたい。Ⅱは川の問題であるが、ほとんど読み取りで何とかなる開成らしい問題。時事問題も確認しておきたい。
○大問3…生物分野の問題。ほとんど知識が必要なく、読み取りと考察で解ける開成らしい問題。過去問で練習して満点を狙いたい。
○大問4…物理分野の問題。問1と問2までは典型題なので満点を狙いたい。今回は問3、問4、問5を扱いたいと思います。
(問題)令和2年 開成中学校 理科 大問4 問3 問4 問5
厚さ一定の変形しない板(横80cm×縦50cm)から図6のような形を切り取りました。図7は切り取られて残った部分を表しています。なお、板の大きさがわかりやすいように、縦横10cmごとに破線が描かれています。また、板をつるしている糸はすべて同じ長さであるとします。
問3 切り取った板を図8のように60cmの棒に、両端の位置が揃うように取り付けました。このとき、棒が水平に保たれるためには、図中の[ エ ]の長さをいくらにすればよいでしょうか。なお、板を図9のように10cmごとに切って棒に取り付けても、棒を水平に保つために支える位置は同じになります。
問4 切り取られて残った部分を図10のように80cmの棒に、両端の位置が揃うように取り付けました。このとき、棒が水平に保たれるためには、図中の[ オ ]の長さをいくらにすればよいでしょうか。なお、切り取られる前の板の重心は、板の中心になります。
問5 図11のように厚さが一定の半径30cmの円板の板から半径10cmの円形の板が切り取られて残った部分があります。この板を図のように60cmの棒に、2つの円の中心を結んだ線と棒が平行になるように、板が棒の幅にちょうどおさまるように取り付けました。このとき、棒が水平に保たれるためには、図中の[ カ ]の長さをいくらにすればよいでしょうか。
[解説]
問3 問題文の最後にヒントが書いています。
『なお、板を図9のように10cmごとに切って棒に取り付けても、棒を水平に保つために支える位置は同じになります』
さらに前半の問題文を省略していますが
『このように、一見複雑で重心の位置がわかりにくいものも、うまく分けてその部分ごとに重心を求めることで、全体の重心を求めることができます。』
とも書いています。
これらの誘導に乗ると図9において6つの短冊のそれぞれの重心はそれぞれの糸がついてるところで考えればよく
上の糸は正方形の板15個分を持ち上げているはずなので
棒の左端の点の周りのモーメントを考えて[ エ ]を求めることができあす。
6つの短冊の糸は左から
5cm 15cm 25cm 35cm 45cm 55cm
のところにあります。
よって
2×5+3×15+1×25+4×35+3×45+2×55=15×[ エ ]
より
[ エ ]=31cm
とわかります。
問4
正方形をそれぞれ上に詰めていって左から
5個 3個 2個 4個 1個 2個 3個 5個
の短冊がぶら下がっていると考えても左右の重心の位置はかわりません。
だから同様にして左端の点の周りのモーメントを考えて
5×5+3×15+2×25+4×35+1×45+2×55+3×65+5×75=25×[ オ ]
り
[ オ ]=39.4cm
問5
高校でよくある出題される典型問題です。
半径10cmの円形と網目部の板
を合体させると
半径30cmの円形の板になる
ことを使います。
(半径10cmの円形の板):(半径30cmの円形の板):(網目部の板)
=1×1:3×3:(3×3-1)
=1:9:8
で
半径10cmの円形の板の重心は左端から20cm
半径30cmの円形の板の重心は左端から30cmで
左端の点の周りのモーメントを考えて
1×20+8×[ カ ]=9×30
より
[ カ ]=31.25cm
最初にも書いたように大問1~3が開成対策をしていればほぼ満点を狙いやすかったのに対して、大問4で差がついたように思います。
それでも問2まで答えれば合格点です。
まず問2までは確保してから、高校物理で扱うようなモーメントを練習しておけばアドバンテージになります(畠田)
開成中学校 算数 問題解説&入試分析★2021年(R3年)
今回は開成中学をとりあげます。
【入試資料分析】
今年はコロナが影響したのか受験者数は近年で一番少なくなりました。
確実に合格するところを受ける人が多かったと思われます。
受験者数1051人,合格者398人,倍率2.06
算数の合格者平均は例年程度であったと思います。
合格者平均217.9点
各教科の平均点は
(合格者平均 全体平均 満点)の順に
国語(58.0 49.1 85)
算数(55.8 45.8 85)
理科(54.1 49.7 70)
社会(49.9 45.9 70)
【問題分析】
○大問1…(1)基本的な日暦算。うるう年のルールも書いていて計算も複雑ではない。敢えてこのような基本が大切であるとメッセージ性のある問題を出すところが開成なのかもしれません。
(2)交点の個数を数える問題。規則性を利用してやりやすい問題であったと思います。
(3)正六角形の問題。正六角形を分割する標準的な問題です。
(4)、(1)~(3)まで基礎的な問題を出しておいて突然ハードな問題。今回はこれを扱いたいと思います。
大問2…(1)さすがに外せない問題。(2)意外と難しい。三角錐と断頭三角錐を4つ取り除く方法などある。(3)こちらも断頭三角錐を4つ取り除く方法などがある。断頭三角錐には救われることが多いのでしっかり練習しておきたい。
大問3…文章を読み取って問題を把握するのが結構大変。(1)(2)(3)くらいまでは正解しておきたい。(4)や(5)は2進法の計算と同じであることに気づけば答えがすぐに出る。
(問題)令和2年 開成中学校 算数 大問1(4)
1/9998を小数で表すとき。小数第48位の数、小数第56位の数、小数第96位の数をそれぞれ求めなさい。
[解説]
まず実際に割り算をおこなってみて規則性を考えてみることが基本です。
筆算を次のように書いていきます。
1=9998×0.0001+0.0002
0.0002=9998×0.00000002+0.00000004
0.00000004=9998×0.000000000004+0.0000000000000008
…
と続けていくことになります。
常に両辺が2/10000倍ずつになっています。
だから
1=9998×(0.0001+0.00000002)+0.00000004
=9998×(0.0001+0.00000002+0.00000004)+0.0000000000000008
となるので商は
0.0001+0.00000002+0.00000004+…
となっていきます。
2/10000倍ずつして足していくことになります。
ということは
小数第48位は48÷4=12より
2を12-1=11回かけると2048で、小数第48位は2048の一の位の8となります。
小数第56位は56÷4=14より
2を14-11=13回かけると8192になります。
2を14回かけると16384で5桁となるので今回は後ろからも影響を受けます。
小数第56位は
81920000+16384=81936384より万の位の3となります。
小数第96位は96÷4=24より
2を24-1=23回かけると8388608
2を24回かけると16777216で8桁
2を25回かけると33554432で8桁
で今回は後ろ2つから影響をうけます。
よって小数第96位は
838860800000000+167772160000+33554432
=839028605714432
より億の位の6となります。
後ろの影響を受けることには注意しないといけません。
(※この問題は数学的には
初項0.0001、公比0.0002の無限等比級数
0.0001+0.0001×0.0002+0.0001×0.0002^2+…=0.0001/(1-0.0002)
=1/9998
と関係があります。)
今年の問題は簡単な問題と難しい問題が極端にわかれました。
まず基本的な問題は絶対に落とせません。
そして読み取りや規則性などで点数を確保していけば合格点に近づきます!(畠田)
開成中学校 理科 問題解説&入試分析★2020年(R2年)
今回は開成中学の理科をとりあげます。
【入試資料分析】
受験者数は今年も例年通りでした。
理科は(合格者平均 全体平均 満点)の順に(56.0 48.1 70)
でした。
ここ数年では低めです。
【問題分析】
○大問1…天体の問題です。基礎をしっかりおさえていれば細かいところまでは問われませんが,問題文を読み取って答える力が求めれます。
○大問2…手回し発電機の問題です。今回はこの問5をこれを扱いたいと思います。
○大問3…溶解度の問題で基礎的な計算、知識しか求められていませんが表を読み取り、どうなるのか推論する力が必要です。
○大問4…植物の問題ですが植物の知識問題はなく、全てその場で読解して解く問題です。問題文も長く,表やグラフも多いので処理能力が求められます。印をつけて成長を調べる類題はあるので,しっかり練習しておきたいところです。
(問題)令和2年 開成中学校 理科 大問2
手回し発電機とはモーターに手回しハンドルを付けたもので,以下では,手回し発電機のハンドルの回転方向を,ハンドルの側から見て「時計回り」,「反時計回り」と表します。
はじめに,図1のように手回し発電機G1(以下ではG1と表します)と豆電球を接続します。ハンドルを時計回りに手で回転させると豆電球が点灯します。このとき,電流は黒いたんしから出て豆電球を通過して白いたんしに入ります。
次に,図2のようにG1のハンドルにはさわらずに,かん電池を接続すると,ハンドルは時計回りに回転します。
最後に,図6のようにG1とコンデンサーを接続し,G1のハンドルを時計回りにしばらくの間手で回転させ,ハンドルから手をはなします。
問5 図6において下線部③の直後,G1のハンドルはどのようになりますか。正しいものを,次のア~オの中から一つ選び,記号で答えなさい。
ア すぐに回転が止まり,そのまま回転しない。
イ すぐに反時計回りに回転し始め,だんだん回転が速くなる。
ウ すぐに反時計回りに回転し始めるが,だんだん回転がおそくなる。
エ 時計回りに回転し続け,だんだん回転が速くなる。
オ 時計回りに回転し続けるが、だんだん回転がおそくなる。
[解説]
図1と図2からモーターはハンドルを時計回りに回すと黒いたんし側が電圧が高くなります。
またモーターの黒いたんしへ電流を流すとハンドルが時計回りするということがわかりました。
まずG1のハンドルを時計回りに回すと黒いたんしの方が電圧が高くなり黒いたんしからコンデンサーに向かって電流が流れます。
だからコンデンサーは充電されて黒いたんし側が+極、白いたんし側が-極の電池になります。
ハンドルから手を放すとコンデンサーのG1の黒いたんしとつながっている側の電圧が高くなるのでコンデンサーから黒いたんしに向かって電流が流れます。
よってハンドルは時計回りに回ることがわかります、
しばらくすると、充電されたコンデンサーに蓄えられた電気が少なくなってきてだんだん回転が遅くなりオとわかります。
問題文にハンドルを回した時に流れる電流の方向と同じ方向に電流を流すとハンドルは逆に回ることは書いてありますが,何故そうなるのかも考えてみてください。
必要な知識は基礎的なものですが,開成らしく読解力と正確な処理が求められます。
がんばってください(畠田)
開成中学校 算数 問題解説&入試分析★2020年(R2年)
今回は開成中学をとりあげます。
【入試資料分析】
受験者数は今年も例年通りでした。
受験者数1188人,合格者397人,倍率3.0
算数の合格者平均は6割を切っており,ここ数年では一番低くなりました。
どの問題も問題文の理解も難しく典型的でもないものがほとんどで全体的にかなり難しかったようです。
合格者平均211.3点
各教科の平均点は
(合格者平均 全体平均 満点)の順に
国語(51.5 42.3 85)
算数(49.5 38.6 85)
理科(56.0 48.1 70)
社会(54.3 50.0 70)
【問題分析】
○大問1…グラフからAとBの速さの差がわかり,速さを組み合わせます。例えば1分から2分の間は差が45cm/分なので停止と毎分45cmの組み合わせしかないなど場合分けしてけます。意外と場合分けが多くなく数学的には簡単ですが,問題文の理解や,どう考えていけばいいか,開成らしい難しさだったと思います。
○大問2…問題文はそんなに長くなく、計算は角速度を使うぐらいではありますが,①の移動の開始時と,④の移動の時間を調節しないと解けないので,問題の把握が難しかったと思います。
○大問3…今回はこれを扱いたいと思います。
○大問4…光が平行なタイプの影の問題です。この問題が一番理解がしやすく,アプローチの仕方もわかりやすかったと思いますが展開図に影を塗るのが間違えそうになるので,処理能力が求められています。
(問題)令和2年 開成中学校 算数 大問3
あるクラスで,生徒全員から決まった金額を集めることになりました。そこで,学級委員の太郎君と花子さんは集めやすくするために次のようなルールを作りました。
ルール1 使えるお金は1円玉,5円玉,10円玉,50円玉,100円玉,500円玉の6種類の硬貨とする。
ルール2 おつりの無いように持ってくる。
ルール3 硬貨は,1人につき10枚まで持ってくることができる。
(1)クラスの生徒40人から28円ずつ集めることにしました。
(ア) ルールに合うように28円を持ってくる方法は全部で何通りありますか。
(イ) 集まったお金のうち,1円玉を数えたら165枚ありました。このとき,5円玉を1枚も持ってこなかった生徒は何人ですか。
(2)このルールについて,太郎君と花子さんは次のようなやり取りをしています。空らん①~⑧にあてはまる数を答えなさい。
太郎 「集める硬貨が多くなり過ぎないようなルールを決めたけど,このルールだと集められない金額ってあるよね。」
花子 「たしかにそうね。例えば389円を用意するとしたら,ルール1とルール2を守れば,最低でも[ ① ]枚の硬貨が必要だから,ルール3を守れないわね。」
太郎 「このような金額ってどれくらいあるのかな。」
花子 「そのうち一番低い金額は[ ② ]円だとわかるけど,たくさんありそうね。」
太郎 「49円までの金額を用意するのに必要な最低枚数の表を作ってみたよ。」
花子 「なるほど,この情報と50円玉,100円玉,500円玉の組み合わせを考えると,ルール1とルール2を守れば,ルール3を守れないものは,300円までの金額では[ ⑦ ]通りあり,1000円までの金額では[ ⑧ ]通りあるわね。」
太郎 「次に集めるときはルールを考え直してみないといけないね。」
(1)
(ア)
表を書くのがお決まりの処理です。
4通り
(イ)28円になるには1円玉は3枚か8枚かの二択です。
3枚使った人は5円玉を必ず持ってきています。
1円玉を8枚使った人は硬貨は残り2枚しか持ってこれないので10円玉2枚に決まり5円玉を持ってきていないのでこの人数を求めたらよいことがわかります。
つるかめ算から全員1円玉を3枚使ったとすると1円玉は40×3=120枚になるので1円玉8枚使った人数は
(165-120)÷(8-3)=9人
(2)
①
390円をルール1とルール2を守って出来るだけ枚数を少なくするには金額の大きい硬貨を出来るだけ持ってきた場合です。
500円玉は使えない
100円玉は出来るだけ使って3枚で残り389-100×3=89円
50円玉は出来るだけ使って1枚で残り89-50=39円
10円玉は出来るだけ使って3枚で残り39-10×3=9円
5円玉は出来るだけ使って1枚で残り9-5=4円
1円玉は4枚必要で
3+1+3+1+4=12枚必要となります。
②
一番低い金額で枚数を出来るだけ多くするには
金額の小さい硬貨を,金額の大きな硬貨で繰り上げにならないように出来るだけ使っていきます。
11枚になればよいので
1円玉を4枚で残り11-4=7枚
5円玉を1枚で残り7-1=6枚
10円玉を4枚で残り6-4=2枚
50円玉を1枚で残り2-1=1枚
100円玉を1枚
よって1×4+5×1+10×4+50×1+100×1=199円
③④⑤⑥
500円玉は1枚まで,100円玉は4枚まで,50円玉は1枚まで,10円玉は4枚まで,5円玉は1枚まで,1円玉は4枚までのルールで数えてください。
要領よく解くとすれば49円までなら
10円玉4枚と5円玉1枚と1円玉4枚の10×4+5×1+1×4=49円の4+1+4=9枚
から選ぶことになりますが
選んだ☐円で△枚の硬貨に対して,残りの硬貨は49-☐円で9-△枚になっています。
だから5枚の場合は9-5=4枚の場合と同じ9通り
6枚の場合は9-6=3枚の場合と同じ7通り
7枚の場合は9-7=2枚の場合と同じ5通り
8枚の場合は9-8=1枚の場合と同じ3通り
とわかります。
⑦
0円~49円まではわかっているので50円~99円は50円玉を1枚追加して考えればよいことがわかります。
表より一つ追加して10枚をこえるものはありません。
同様にして100円~149円は100円玉を1枚追加で表より10枚をこえるものはありません。
150円~199円は100円玉1枚と50円玉1枚の2枚追加で10枚をこえるものは表の最低枚数9枚の1通りに対応して1通り
200円~249円は100円玉を2枚追加で10枚をこえるものは同様に1通り
250円~299円は100円玉2枚と50円玉1枚の3枚追加で10枚をこえるものは表の最低枚数
8枚と9枚に対応して1+3=4通り
300円は100円玉3枚で大丈夫です。
よって1+1+4=6通りとわかります。
⑧同様にして
300円~349円…4通り
350円~399円…9通り
400円~449円…9通り
450円~499円…16通り
500円~549円…0通り
550円~599円…1通り
600円~649円…1通り
650円~699円…4通り
700円~749円…4通り
750円~799円…9通り
800円~849円…9通り
850円~899円…16通り
900円~949円…16通り
950円~999円…25通り
1000円…0通り
よって
(1+4+9+16)×4-16+25=129通り
この問題は小さい数字で実験をしてみて規則性を発見するのに良い練習の問題です。開成でよく出るタイプのアプローチなのでしっかり練習していきましょう。がんばってください(畠田)
開成中学校 算数 問題解説&入試分析★2019年(H31年)
今回は開成中学をとりあげます。
【入試資料分析】
受験者数は例年通りでした。
受験者数1159人,合格者396人,倍率2.9
算数の合格者平均は易化した去年よりは下がりましたが、難易度が簡単というわけでもないところ7割6分と高く,特に高い処理能力が求められたように思います。
合格最低点218点
各教科の平均点は
(合格者平均 全体平均 満点)の順に
国語(50.1 43.6 85)
算数(64.6 51.0 85)
理科(65.2 61.7 70)
社会(52.1 48.3 70)
ハイレベルな難問というタイプではありませんが,初めて見るような問題をどうアプローチするか,典型的な問題の高いレベルでの習得が求められます。
【問題分析】
○大問1
速さの基本的な解法を組み合わせて解く問題です。
たくさん練習しておいて,正確に早く点数をとりたいところです。
ダイアグラムを書いて距離が同じとき,時間の比は速さの逆比になることで比をおいていきます。
K君がおばさんの家から引き返してS君に出会うまでと,S君に出会ってからおばさんの家につくまでの時間の比は
80:100=4:5
S君が自宅からおばさんの家までスイカを1つ持っていく時と,S君が自宅からおばさんの家までもし一人でスイカを2つ持っていくとかかる時間の比は
60:80=3:4
S君ちK君が出発して2個目のスイカをおばさんの家まで運び終わるまでの時間と,S君が自宅からおばさんの家までもし一人でスイカを2つ持っていくとかかる時間の比は
15:16
よって比合わせをして図の赤い数字のようになります。
(1)(④+⑤)÷㊽=3/16倍
(2)(距離の比)=(時間の比)×(速さの比)より
㊱×80:④×100=36:5で5/36倍です。
(3)(速さの比)=(距離の比)÷(時間の比)より
K君のスイカ1つの速さとS君のスイカ1つの速さの比は
36/㊱:(36-5)/(㊱+④)=40:31
よってS君のスイカ1つの速さの比は80×31/40=62m/分
○大問2
立体の切断と射影の問題です。
大問1に続き基礎的なことを組み合わせて解く問題で,しっかり練習しておいて素早く正確に解けるように仕上げる必要があります。
(1)
切断の基本的な解き方として例えばPRを延長して底面EFGHが乗っている平面との交点とQを結び、後は平行な面において切り口の直線が平行になるように書いていきます。
切り口は六角形になります。
次の問いのために12:9=4:3より図のように赤文字のところ長さ3cmとわかります。
(2)
前から見ると図の斜線部のようになるので長方形AEFBの面積は
228+12×9÷2+4×3÷2=288cm^2よりAE=228÷20=14.4cmとわかります。
次の問いのために14.4-9=5.4cm,5.4×4/3=7.2cmとだしておきます。
上から見ると図の黒い斜線部のようになり,青い斜線部は平行四辺形であることに注意してください。
赤文字のように12+7.2-4=15.2cmと長さがわかり
8:15.2=10:19,7.2:16=9:20なので赤文字のように⑩,⑲,⑨,⑳とそれぞれ長さがおけます。黒い斜線部の面積を考えて
20×㉙-8×⑩÷2-16×⑳÷2=266
より①=7/10よりAD=㉙=20.3cmとわかります
○大問3
この問題をとりあげようと思います。
○大問4
開成らしい初めて見る問題でどのようにアプローチしていくのか練習と,過去問を研究して心構えが出来てる必要があります。
最後の問題で時間も厳しく,そう簡単でもないので(2)(a),(b)くらいまでとれたら大問1,2,3でミスがあっても合格者平均のレベルを保てます。
アプローチは(1)のようにとりあえず具体的にやってみることです。
(1)
A12 B56 C78 D34 E9T [1]→
A1T B52 C76 D38 E94 [2]→
A1T B52 C76 D38 E94 [1]→
A19 B2T C65 D37 E48 [2]→
A× B× C65 D× E×
(2)(a)どこから手をつけていいかわかりにくいですが,とりあえずよくわからないままにやってみましょう。
限定的なことだけ考えればいいので結構できるもんです。
●[x]
最初の[1][2]の操作後のCはDに3がないと仮定すると最後にD38より3を持っているからCに3があったということになります。3が移動してくるには相方は3より小さい数1か2ですが1の場合は奇数同士で×になります。
なのでC23の場合しかないことがわかります。
●[y]
後半の[1][2]の操作後でDは3を受け取りD38になるので最初の[1][2]の操作後は8を持っていたことになります。
この時,相方は8より大きいので,9かTですがTの場合は偶数同士で×になります。
よってD89しかありません。
●[z]
最初の[1][2]の操作後でC23 D89なので一番初めはCの小さい方の数は2か3のどちらか,Cの大きい方の数は8か9のどちらかですが偶数同士、奇数同士では×になるので
一番最初はC29かC38しかないことがわかります。
(b)これもどこから手をつけたいいかわからないように見えてよくわからないままにやると限定的なことだけ考えればいいので意外とわかります。
一回目で負けないことから
A,B,C,D,Eどれもが
大きい方の数は全て偶数,小さいの方の数は全て奇数か
大きい方の数は全て奇数,小さいの方の数は全て偶数か
のどちらかです。
ただし1より小さいものはない(またはTより大きいものはない)ので
小さい方は1,3,5,7,9
大きい方は2,4,6,8,T
2とのペアは1しかないので12はペア
…
と考えていくと12 34 56 78 9Tのペアとなります。
つまりハートよりもスペードの方が1大きいとわかります。
(c)この問題は最後の問題であり,それなりの場合分けも必要になって厳しいと思います。
最初の操作[1][2]の後Dが3を持つことがわかりました。
一番最初は12 34 56 78 9Tのペアですが34というペアでは4が移動するので一番最初は
D34と決まります。
すると最後はDが8を持たないといけないので一番最初は78についてはC78かB78のどちらかになりますがC78では8が最後にEまで移動してしまうのでB78と決まります。
8がBからDまで2回移動するには間のCで9以上,Dが最後まで3が残るには2がDに移動してきてはいけない
となるとCは56で決まります。
これで一番最初はB78 C56 D34となっていますが最後はEに6が移動してくることになるのでこの時偶数同士になって消える必要がありますが1は移動しないのでE9T,A12と決まります。
A12 B78 C56 D34 E9T [1][2]→
A1T B72 C58 D36 E94
それでは大問3をとりあげます。
場合分けしてイチイチ解法で足しあげて処理をしても解けるし,小問の意味を考えてうまく解く方法もあります。
うまい解法がいつでも思いつくわけでないのでイチイチ解法で素早く正確に処理できるように練習しておくのが基本的な戦略になりますが,ここではせっかくなので出題者の意図に沿ったと思われる解法を紹介したいと思います。
(問題)平成31年 開成中学校 算数 大問3
空間内または平面上にひかれた道を進んで,点Aから点Bまで移動するとき,その移動経路が何通りあるかを考えます。
(1)<<図1>>は一辺の長さが1の立方体を4個組み合わせて,横幅2,高さ2,奥行き1の直方体をつくり,その直方体と点A,Bを結ぶ道をつけたものです。図の中で点Aと点Bを結ぶ太線が,通ることのできる道です。
<<図2>>は一辺の長さが1の立方体を4個組み合わせて,横幅4,高さ1,奥行き1の直方体をつくり,その直方体と点A,Bを結ぶ道をつけたものです。<<図1>>と同じく太線で表された道を通ることができます。
これらの道を,右,上または奥のいずれかの方向に進むことで,点Aから点Bまで移動するとき,考えられる移動経路は,<<図1>>,<<図2>>のそれぞれについて何通りありますか。
(2)<<図3>>は一辺の長さが1の正方形を2個並べて,横1,縦2の長方形をつくり,その長方形と点A,Bを結ぶ道をつけたものです。図の中で点Aと点Bを結ぶすべての道が,通ることのできる道です。
<<図4>>は一辺の長さ1の正方形を3個並べて,横3,縦1の長方形をつくり,その長方形と点A,Bを結ぶ道をつけたもので,<<図5>>は一辺の長さが1の正方形を6個並べて,横3,縦2の長方形をつくり,その長方形と点A,Bを結ぶ線をつけたものです。それぞれ<<図3>>と同じく,点A,Bを結ぶすべての線を道として通ることできます。
次のような規則に従ってこれらの道を通り,点Aから点Bまで移動することを考えます。
規則「一回あけ左に1進み,それ以外は右または上に進む」
ただし,進む方向を変更できるものは正方形の頂点の場所だけです。点Aにもどったり,点Bからもどったりはできません。また,規則に従うかぎり,同じ道を2回以上通ることも可能です。
このとき,<<図3>>の点Aから点Bまでの移動経路は10通りあります。では,<<図4>>,<<図5>>のそれぞれについて,考えられる移動経路は何通りありますか。
[解説]
(1)<<図1>>については平面の2×3の場合と同じなので(5×4)/(2×1)=10通りとわかります。
<<図2>>については
合計で上に1回,右に4回,奥に1回進むので上に進むことを↑,右に進むことを→,奥に進むことを↗であらわすと移動経路は
↑,→,→,→,→,↗
を並べる方法と対応させることができます
ただし↗は一番右の→と一番左の→の間に入ります。
→○→○→○→
この3つの○の場所から↗が入る場所を選んで3通り
例えば一つの並び
○→○↗○→○→○→○
に対してこの6つの○の場所から↑が入る場所を選んで6通り
よって3×6=18通り
(2),(1)がどう関係してくるのかを考えると
左に戻るという操作を上に進むと解釈します。
<<図4>>の図形を二つ用意して,左右に1,上下に1ずらして正方形の頂点同士を上下に結んで出来た道の移動経路と対応させることできます。
これは<<図2>>と同じなので18通りとわかります。
<<図5>>も同じように二つ用意してずらして道を作ると
合計で上に2回,右に4回,奥に1回なので移動経路は
↑,↑,→,→,→,→,↗
を並べる方法と対応させることができます
ただし↗は一番左の→と一番右の→の間に入ります。
→○→○→○→
の3つの場所から↗が入る場所を選んで3通り
例えば一つの並び
○→○↗○→○→○→○
に対して6つの○の場所に↑2つが入る場所は
2個が同じところに入る場合6通り
2個が別々に入る場合は(6×5)/(2×1)=15通りより合計6+15=21通りより
3×21=63通り
(注,重複組み合わせを知っていると6つの場所から重複を許して2個選方法は6H2=7C2=21と求められる)
(畠田)
開成中学校 算数 問題解説&入試分析★2018年(H30年)
今回は開成を扱いたいます。
受験者数1171人,合格者388人,倍率3.0
合格最低点227点
各教科の平均点は
(合格者平均 全体平均 満点)の順に
国語(55.2 47.2 85)
算数(73.9 62.0 85)
理科(58.2 53.5 70)
社会(53.8 48.6 70)
算数は今年は典型的な普通の簡単な問題で合格者平均が8割7分と非常に高くなりました。その分、全体の合格最低点も高くなっています。
過去10年の算数の平均点は
60.9→64.6→72.1→55.7→68.3→61.9→61.1→53.7→54.8→73.9
でもっとも難しいのが2年続いて、突然もっとも簡単になりました。
開成は傾向がないのが傾向だけでなく、難易度の傾向もないのが傾向と言えそうです。
それでは平易な問題が多かったですが、一つ問題をとりあげたいと思います。
(問題)平成30年 開成中学校 算数 大問4
正方形のマスの中に,1は1個,2は2個,3は3個のように整数nはn個使い,ある整数から連続した3種類以上の整数を図のように小さい順に並べます。
図1では3マス四方の正方形に,2を2個,3を3個,4を4個,ちょうど並べきりました。
図2,図3では,6マス四方の正方形に11から13まで,1から8までの整数をちょうど並べきりました。(6マス四方に並べる並べ方はこの2通り以外ありません。)次の問いに答えなさい。(1),(2)では,2通り以上の並べ方がある場合は,すべて答えること。解答らんには,図1の3マス四方なら[2~4],図2,図3の6マス四方なら[11~13 1~8]のように書きなさい。
(1)7マス四方の正方形にちょうど並べきるには,いくつからいくつまでの整数を並べればよいですか。
(2)10マス四方の正方形にちょうど並べきるには,いくつからいくつまでの整数を並べればよいですか。
(3)30マス四方の正方形にちょうど並べきる並べ方は何通りありますか。また,それぞれの並べ方は何種類の整数を使うかを求めなさい。(6マス四方の正方形にちょうど並べきる並べ方は図2,図3の「11~13」,「1~8」の2通りです。この場合には,「[2]通りの並べ方があり,それぞれ[3,8]種類の整数を使う」と答えること。また,種類を示す整数は小さい順に並べること。)
図1では
2+3+4=3×3
図2では
11+12+13=6×6
1+2+3+4+5+6+7+8=6×6
と言うように連続する1以上の整数の和で表せばよいことがわかります。
連続する1以上の整数の和についてまとめると
偶数個のとき和は
(平均値)×(偶数個)
奇数個のとき和は
(平均値)×(奇数個)
となります。
偶数個の平均値の小数部分は0.5になることに注意してください。
以下、奇数個を先に数えてから偶数個を考えることにします。
(1)
7×7=49は
49×(1個)
7×(7個)
24.5×(2個)
このうち3種類以上のものは平均値が7で7種類の
[4~10]の整数を並べればよいことがわかります。
(2)
10×10=100は
100×(1個)
20×(5個)
12.5×(8個)
このうち3種類以上のものは平均値が20で5種類と平均値が12.5の8個より
[18~22],[9~16] の整数を並べればよいことがわかります。
(3)
30×30=900は
900×(1個)
300×(3個)
180×(5個)
100×(9個)
60×(15個)
36×(25個)
112.5×(8個)
37.5×(8×3個)
22.5(8×5個)
このうち3種類以上ものは種類が3,5,9,15,25,8,8×3=24,8×5=40の8通りあることがわかりました。
注…ある数を連続する1以上の整数の和で表す方法は一般に奇約数の個数あることが知られています。
例えば900であれば900=2×2×3×3×5×5より3が2つ,5が2つなので(2+1)×(2+1)=9通りあることわかります。
有名な典型問題でひねりも特にありませんが,1問でも間違えれば大きく響きます。
問題の内容が簡単でもたくさんの練習をしておくことが大切です(畠田)
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