前回の続きで灘中学校、2019年度算数2日目大問4,大問5をとりあげます。
大問4は高校数学の整数問題で普通に解ける問題ですが誘導に載って解いたとしても,基本的な考え方は素因数分解で,素因数分解の勉強になります。
大問5は立体をとらえるときに,高校数学では積分で体積を求めるときに断面を考えてますが,この問題も断面を考えることによって立体をとらえる問題です。類題がこれまで他の学校でも出題されてきましたが,断面の誘導が強く出ていて,断面で立体をとらえる勉強になります。
○大問4
どの辺の長さも,3cmのように整数に単位cmをつけて表される長方形を「整長方形」ということにします。ただし,正方形は整長方形に含めないことにします。
(1)整長方形の周の長さがa cm,面積がa cm^2であるとき,aにあてはまる整数は次の説明文のようにして求めることができます。空欄①,②,③に入る適当な数を答えなさい。
ただし,同じ番号の空欄には同じ数が入ります。
右の図のように,整長方形ABCDがあり,周の長さはa cm,面積はa cm^2であるとします。
辺AB上に点P,辺BC上に点Q,辺CD上に点R,辺DA上に点Sを,直線PRと直線BCが平行で,直線SQと直線DCが平行になるようにとります。
BPの長さとSDの長さがどちらも[ ① ]cmであるとき,整長方形PBCRの面積と整長方形SQCDの面積の和はa cm^2になります。このとき,直線PRと直線SQが交わる点をTとすると,整長方形APTSの面積は[ ② ]cm^2になります。
このことから,整長方形APTSの直角をはさむ2辺の長さとして考えられるのは1cmと[ ② ]cmとなるため,aにあてはまる整数は[ ③ ]です。
(2)整長方形の周の長さがa cm,面積が(a×2)cm^2であるとき,aにあてはまる整数をすべて求めなさい。
(3)整長方形の周の長さがa cm,面積が(a×2+8)cm^2であるとき,aにあてはまる整数をすべて求めなさい。
[解説]
これは誘導に乗らなくても2辺の長さをx,y(x>y)とすれば
(1)はa=2×x+2×yで2×x+2×y=x×yという不定方式をとけばよくなります。
甲陽などでもx,yを自然数として2数の和と積が等しいx,yを求めろ(x+y=xyを解け)と言う問題がありましたが,同じように解けば
((xが2個分)+(yが2個分))は(xが4個分)より小さい
x×yを(xがy個分)と考えると,xは4個未満(3個以下)にならないといけなかったのでy=1,2,3のみ調べればよくなり(x,y)=(6,3)と解けました。
もっと数学の知識を使って式変形をすると
(x-2)×(y-2)=4
とやって4の約数の組みあわせを考えて
(x-2,y-2)=(4,1)より(x,y)=(6,3)とすぐに出ます。
(2)は4×x+4×y=x×yを解けばよく(x-4)×(y-4)=16と変形して(x-4,y-4)=(16,1),(8,2)より(x,y)=(20,5),(12,6)
(3)も4×x+4×y+8=x×yを解けばよく(x-4)×(y-4)=24と変形して(x-4,y-4)=(24,1),(12,2),(8,3),(6,4)と求めていけます。
誘導の意図をつかむ時間よりも安定して解けるので,このようにまず泥臭く勉強して解いて点数の最低値を底上げすることも合格するのに大切だと思います。
今回は問題の意図に沿って誘導に乗って解く方法を解説したいと思います。
(1)PBとSCの長さが等しいので長方形PBCRと長方形SQCDを並べて図のように長い長方形することが出来てこの面積がa cm^2になります。
この長い長方形は底辺の長さが周の半分でa÷2 cmで,高さを☐ cmとすると
(a÷2)×☐=a
なので☐=2とわかります。
正方形TQCRは2×2=4なので
(長方形ABCD)=(長方形APTS)+(長方形PBCR)+(長方形SQCD)-(正方形TQCR)
より
a=(長方形APTS)+a-4
なので長方形APTSの面積は4cm^2とわかります。
よって1×4の組み合わせしかないのでa=((1+2)+(4+2))×2=18とわかりました。
(2)同じように
(a÷2)×☐=2×aから☐=4で長方形APTSの面積は4×4=16
16=1×16,2×8より
aは((1+4)+(16+4))×2=50と((2+4)+(8+4))×2=36
(3)同じように
(a÷2)×☐=2×aから☐=4で長方形APTSの面積は4×4+8=24になればよいので
24=1×24,2×12,3×8,4×6よりaは
((1+4)+(24+4))×2=66,((2+4)+(12+4))×2=44,((3+4)+(8+4))×2=38,((4+4)+(6+4))×2=36
とわかりました。
○大問5
一辺の長さ4cmで中身がつまった2つの立方体A,Bがあります。立方体Cは一辺の長さが12cmで,はじめ,図のように立方体Aの上面は立方体Cの上面の㋐に,立方体Bの上面は立方体Cの上面の㋒に重なっています。立方体Aは回転することなく一定方向に進み,下面が立方体Cの下面の㋑に到着しました。そののち,立方体Bは回転することなく一定方向に進み,下面が立方体Cの下面の㋓に到着しました。このとき,立方体Aが通過した部分をX,立方体Bが通過した部分をYとして,XとYが重なった部分をZとします。
(1)右の図は,立方体Cの下面から9cmの高さにある平面でZを切ったときの真上から見た切り口をかき入れたものです。その平面と面PQRSの交わりを太線で表しています。立方体Cの下面から8cm,7cm,6cmの高さにある平面でZを切ったときの真上から見た切り口を,右の図にならってそれぞれかき入れなさい。
(2)Zのうち,立方体Cの下面から8cmの高さにある平面と10cmの高さにある平面ではさまれた部分の体積を求めなさい。
(3)Zのうち,立方体Cの下面から6cmの高さになる平面と8cmの高さにある平面ではさまれた部分の体積を求めなさい。
[解説]
類題が難関校でよく出ている問題です。
灘で出やすい分野、お題です。
XとYの共通部分の立体を考えて断面を調べるのではなく,XとYそれぞれの断面を考えてその共通部分を調べる
上面と下面の通過部分を考える
しっかり練習しておけばアプローチに迷うことはなかったと思います。
断面において動かす立方体の上面が通ったところ,下面が通ったところを描いて対応する頂点を結べば断面ができます。
青がXの断面,赤がYの断面です。
青と赤の共通部分が求める断面になります。
(2)共通部分をイメージするのではなく断面を元に共通部分の立体をとらえます。
高さ8cm,9cmの断面はかいているので10cmの断面を考えてみると
高さ10cmは立方体A,Bの最初の位置の下面より上なので,下面が最初の位置であると考えて描けばよく図のようになります。
XとYの共通部分は図の黒い線になります
これら高さが8cm,9cm,10cmの断面図から,黒い点が同じ位置にあることに注意して立体の図を描いてみます。
底面積が4×2÷2=4cm^2,平均の高さが(4+4+4)÷3=4cmの断頭三角柱の部分と
青い部分の底面積が4×2÷2=4cm^2高さが2cmの三角すいに分けて考えて
4×4+4×2÷3=56/3cm^3
とわかります。
(3)高さ6cm,7cm,8cmの断面の図から考えて黒い点が同じ位置であることに注意すると
図のようになります
対角線の長さが8cmずつの正方形を底面とした高さ2cmの直方体から
底面積が4×2÷2=4cm^2,高さが2cmの青い三角すい3つを取り除いて
8×8÷2×2-4×2÷3×3=56cm^3
とわかりました。(畠田)